マウンテンバイクの呼称(続きの続きの続き)
オールティレインバイク/All Terrain Bikeという呼称。これは、自然発生的に生まれてきた呼び名ではなく、多分に業界の作為的な意図のもとに生み出された、マスコミ主導のネーミングでした。
えっ? エエ加減なこと云うなって?
ホントですョ。証拠もあるんです。
ですが…、今はちょっと詳しくは云えません。
なぜって?
いま、一生懸命、僕の資料箱の中を探しているんですが、まだ見つからないんです。その証拠の雑誌記事が…。
見つけ次第、公開して説明します。
では、覚えている範囲で、簡単に経緯を…。
1980年代半ばのこと。フィッシャーとリッチーや、他のいわゆる先駆者と呼ばれるビルダー、デザイナー達のあいだで、マウンテンバイクという呼称を巡って、ちょっとしたイザコザがありました。
あまりにも、マウンテンバイクという名が、「云い得て妙」というか、イメージにピッタリとはまっていて、誰もがその呼び名を商標として使いたがっていました。
リッチー、フィッシャーを中心に、その名の独占使用権をめぐってけっこうドロドロした係争(訴訟さわぎに発展しました)があったんです。
じつは、僕もそのゴタゴタの渦中にいて、彼らの仲を取り持つのに、けっこう苦労したような記憶があります。あまり、思い出したくないできごとでは、ありましたが…ネ。
さて、そこで、当時もっとも影響力の大きかった自転車雑誌「バイシクリング/Bicycling」の編集長だった、チャック・マカラ/Chuck McCallough氏が、ある号(何年の何月号かを、忘れちゃったんですよ…。資料箱をひっくり返して、探してんだけど…。はやく出てこい!)の冒頭記事で、ひとつの提案をしました。
曰く、「もっとこの自転車にふさわしい呼び名があるんではないか? マウンテンバイクだと、登山家のための自転車ってイメージで、一般人にはなじめない? あまりにも過酷なスポーツのイメージが強いので、もっと一般のひとにも馴染めるような、優しい表現はないの?」と、まあ、こういう論調で、読者に呼び掛けたのが、発端です。
そうなんです。読者から、マウンテンバイクに代わる一般名称を公募したんです。
そして、数週間後に公募結果が発表され、「オールティレインバイク」が、栄えある第一位に輝きました。そこで、その結果を踏まえ、この名を一般呼称として米国社会に定着させよう、というキャンペーンを、展開したんです。
バイシクリング誌だけでなく、他の雑誌も追随し、各誌は、意識的に記事のなかで、マウンテンバイクに代わる呼び名として、オールティレインバイクを、多用するようになりました。
ところが…、ところが…、です。
その後、マウンテンバイクという商標をめぐる係争は、結局、誰も勝利することなく、訴訟そのものが、立ち消えとなりました。ホントに、けむりのように消えちゃったんです。
…で、マウンテンバイクという呼称は、やがて、一般呼称として、自然に米国社会に認知され、誰の所有となるわけでもなく、自由に使われるようになった、というのが、事の真相です。
もちろん、オールティレインバイクも、そのまま認知されて、いまでも使われています。"ATB"という略称のほうが一般的になりましたが…。
また、情報を整理して、後日、もっと詳しく説明しましょう。(資料がちゃんと見つかったら…です)
今日は、このへんで…。